「さしすせそ」の法則を実践し、会話が以前よりスムーズになった。しかし、なぜか表面的な話で終わってしまい、相手の心に一歩踏み込めていない気がする…。
そのように感じているあなたは、聞き上手としての中級レベルに到達した証拠です。 こんにちは。『メンズウェルネスアカデミー』学長のアタマジです。
今回は、聞き上手の「上級編」。あなたが相槌を打つ時、相手に「この人は、私のことを100%理解してくれている」と錯覚させるほどの、強力な心理的技術「バックトラッキング」を伝授します。
この技術をマスターすれば、相手はあなたに絶大な安心感を抱き、自ら心を開き、もっと深い話をしてくれるようになるでしょう。
バックトラッキングとは何か?なぜ絶大な効果があるのか?

バックトラッキングとは、簡単に言えば、相手の発言の“一部”を、そのまま、あるいは少し言葉を添えて「オウム返し」する技術です。
「ただのオウム返し?」と思うかもしれません。しかし、これには3つの絶大な心理的効果が隠されています。
- ①「あなたの話を、私は正確に聞いています」という証明になる ただ「へぇ」「そうなんだ」と聞くのではなく、相手の言葉を繰り返すことで、「私はあなたの話を、一言一句聞き逃さず、正確に理解していますよ」という、これ以上ないほど強力なメッセージになります。
- ②「その点に、私は特に興味を持ちました」という意思表示になる 相手の話のどの部分を切り取って繰り返すかで、あなたは会話の方向性をコントロールできます。興味を持ったキーワードをバックトラッキングすることで、相手はその話題をさらに深掘りして話してくれます。
- ③ 相手の自己認識を深める「鏡」の効果がある 人は、自分の言葉を他人から返されると、まるで鏡を見ているように、自分の発言や感情を客観視することができます。これにより、思考が整理され、「そうそう、つまりこういうことなんだよ!」と、さらに話したくなるのです。
【レベル別】バックトラッキング実践テクニック3選
バックトラッキングには、難易度別に3つのレベルが存在します。まずはレベル1から意識して使ってみてください。
レベル1:事実のバックトラッキング(キーワードのオウム返し)
最も簡単で、最も使いやすい基本のバックトラッキングです。相手の話に出てきた名詞やキーワードを繰り返します。
- 相手: 「週末、久しぶりに映画館で話題のSF映画を観てきたんですよ」
- あなた: 「へぇ、SF映画ですか!いいですね」
- 相手: 「最近、仕事で新しいプロジェクトを任されて、結構やりがいがあるんです」
- あなた: 「新しいプロジェクトですか!やりがいがありそうですね」
これだけでも、「ちゃんと聞いている」という印象は格段に上がります。
レベル2:感情のバックトラッキング(気持ちの言語化)

相手の発言に含まれる「感情」や「気持ち」を表す言葉を拾って繰り返します。これにより、あなたは相手の気持ちに寄り添っていることを示すことができ、共感力が飛躍的に高まります。
- 相手: 「新しいプロジェクトのリーダーに抜擢されたんだけど、プレッシャーがすごくて…」
- あなた: 「リーダーに。それは嬉しい反面、すごいプレッシャーなんですね」
- 相手: 「やっと仕事がひと段落して、本当にホッとしたよ」
- あなた: 「お疲れ様でした。それは本当にホッとしますよね」
レベル3:要約のバックトラッキング(話の要点をまとめる)
最も高度な技術です。相手がある程度長く話した後に、その話の要点をあなたの言葉で短くまとめて返すのです。これが完璧に決まると、相手は「この人は私のことを完全に理解してくれた」と、絶大な信頼を寄せてくれます。
- 相手: (仕事のトラブルについて、どう乗り越えたかを長く話す)
- あなた: 「なるほど…。つまり、予期せぬトラブルで大変だったけど、最終的には周りのメンバーと協力して乗り切れたことが、一番の収穫だった、ということなんですね」
バックトラッキングの注意点

この強力な技術を、ただの不自然なテクニックにしないための注意点です。
- やりすぎない: 毎回の発言にバックトラッキングすると、さすがに不自然です。会話の「節目」や、「ここぞ」という共感ポイントで使いましょう。
- 尋問口調にならない: 語尾を上げ、「〇〇ってこと?」と問い詰めるような口調はNGです。「〇〇だったんですね」と、優しく受け止めるようなトーンを心がけましょう。
- 自分の意見を挟まない: まずは相手の言葉をそのまま受け止めるのが目的です。「〇〇なんだ。でも俺は〜」とすぐに自分の話を始めるのはやめましょう。
まとめ:最高の聞き上手は、相手の言葉を大切に扱う
- バックトラッキングとは、相手の言葉を繰り返すことで、深いレベルの傾聴を示す上級テクニック。
- 「事実」→「感情」→「要約」と、レベルに応じて使い分ける。
- 重要なのは、「あなたの話を、私は大切に受け止めました」という敬意の姿勢。
本当のコミュニケーションは、何を言うかではなく、いかに深く聴けるかで決まります。 バックトラッキングは、あなたの聴く力を飛躍的に高め、相手との間に揺るぎない信頼関係を築くための、最高のツールなのです。