お風呂上がりに、綿棒や耳かきで耳の中をきれいにする。 あの、すっきりとした感覚が“やみつき”になり、毎日の習慣になっている方も多いのではないでしょうか?
こんにちは、アタマジです。 もし、その習慣が、あなたの耳の健康を、知らず知らずのうちに脅かしているとしたら…。
本日の講義は、衝撃的かもしれませんが、耳鼻咽喉科の世界では常識である「耳掃除の真実」について。 この記事を読めば、あなたが「汚いゴミ」だと思っていた耳垢の本当の役割と、なぜ耳掃除が不要なのか、そして、どうしてもケアしたい場合の唯一安全な方法を、科学的に理解できます。
結論:「耳垢」は“ゴミ”ではなく、耳を守る“ガードマン”である

まず、最大の誤解を解きましょう。 耳垢(じこう)は、決して不潔な「ゴミ」や「垢」ではありません。 それは、耳の穴(外耳道)の皮膚を、外部の脅威から守るために分泌される、極めて重要な「保護物質」なのです。
耳垢は、主に以下の3つの役割を持つ、有能なガードマンです。
- ① 潤いを保つ(保湿機能): 耳の穴の皮膚は非常にデリケートです。耳垢は、その皮膚の表面を覆い、乾燥や刺激から守る、天然の保湿クリームの役割を果たします。
- ② 異物の侵入を防ぐ(防御機能): 耳垢の持つ適度な粘り気が、外部から侵入しようとするホコリや、小さな虫などをトラップし、鼓膜まで到達するのを防ぎます。
- ③ 細菌の繁殖を抑える(抗菌機能): 耳垢には、リゾチームなどの抗菌成分が含まれており、弱酸性に保たれているため、細菌やカビが繁殖しにくい環境を作っています。
なぜ「耳掃除は不要」なのか?耳の“自浄作用”の科学
「でも、掃除しないと、耳垢がどんどん溜まって、耳が詰まってしまうのでは?」 そう心配になりますよね。しかし、ご安心ください。健康な耳には、驚くべき「自浄作用(じじょうさよう)」が備わっています。
耳の穴の皮膚は、鼓膜の中心から外側に向かって、1日に約0.1mmという、非常にゆっくりとしたスピードで、常に移動しています。 例えるなら、「動く歩道」のようなものです。
この皮膚の動きに乗って、古い耳垢やホコリは、自然と耳の入り口まで運ばれ、最終的には入浴時や、あくび、食事で顎を動かした際などに、自然にポロっと剥がれ落ちるのです。
綿棒や耳かきが“最悪”である理由
あなたが綿棒や耳かきを耳の奥に入れると、この自浄作用を妨害し、むしろ耳垢を奥へ奥へと押し込んでしまいます。 これが固まってしまうと、「耳垢栓塞(じこうせんそく)」という、耳が詰まった状態になり、聞こえが悪くなったり、耳鳴りの原因になったりします。この状態になると、もはや自力での除去は不可能で、耳鼻咽喉科での処置が必要になります。
それでも耳掃除がしたい人のための「安全な耳ケア」

それでも、どうしても耳の入り口の汚れが気になる、という方のために、唯一安全と言えるケア方法をお伝えします。
- 黄金律:掃除するのは、耳の“入り口”から、自分で見える範囲だけ
- 頻度:月に1〜2回で十分です。やりすぎは禁物。
- 方法: お風呂上がりに、湿らせたタオルや、濡らした綿棒で、耳の穴の入り口付近を、優しく拭う程度にしてください。 絶対に、綿棒や耳かきを、耳の穴の奥(見えない部分)にまで挿入しないでください。鼓膜を傷つけるなどの、重大な事故に繋がる危険性があります。
こんな時は、迷わず「耳鼻咽喉科」へ
以下の症状がある場合は、自己判断で耳をいじらず、速やかに耳鼻咽喉科を受診してください。
- 耳が詰まった感じがする、聞こえが悪くなった
- 耳鳴りがする
- 耳の中が、ひどく痛い、あるいは痒みが続く
プロによる耳掃除は、保険も適用され、安全かつ確実です。
まとめ
- 耳垢は、耳を守る有能な「ガードマン」であり、汚いゴミではない。
- 耳には、耳垢を自然に外へ排出する「自浄作用」が備わっている。
- 綿棒や耳かきは、耳垢を奥に押し込むだけで、非常に危険な行為。
- もしケアするなら、月に1〜2回、耳の入り口を拭う程度に留める。
- 耳に違和感があれば、迷わず耳鼻咽喉科を受診する。
耳掃除の「気持ちよさ」は、時に、あなたの健康を脅かす罠になります。 体の仕組みを正しく理解し、過剰な介入をしない。それこそが、アカデミーが教える、真に知的で、持続可能なウェルネスなのです。