日焼け止め売り場で、あなたは無意識のうちに、最もSPF値が高い「SPF50+」と書かれた製品に手を伸ばしていませんか? 「どうせ塗るなら、一番効果が強そうなものがいいだろう」 その考え、実はあなたの肌にとって、必ずしも「最適解」ではないかもしれません。
こんにちは、アタマジです。 本日の講義は、日焼け止めのパッケージで最も目立つ数字「SPF」の正しいデコーディング(解読)術。
この記事を読めば、あなたはSPFという数字の呪縛から解放され、なぜSPF50+が必ずしも最強ではないのか、そして、あなたの生活シーンに合わせた最も賢い選択とは何かを、科学的に理解できるようになります。
結論:「SPF」とは“防御できる時間の長さ”を示す指標

まず、SPFが何の略称かを知る必要はありません。重要なのは、SPFが何を測定しているかです。
SPF(Sun Protection Factor)とは、肌に炎症を起こし、赤くなる日焼け(サンバーン)の原因となる紫外線B波(UVB)を、どれくらいの「時間」防げるかを示した指標です。
計算は非常にシンプルです。 人が何も塗らない状態で紫外線を浴び、肌が赤くなり始めるまでの時間は、平均して約20分と言われています。 SPF30の日焼け止めを塗った場合、その時間を30倍に引き延ばせる、という意味になります。
20分 × SPF30 = 600分(10時間)
つまり、理論上は10時間、肌が赤くなるのを防げる、ということです。(※あくまで理論値であり、汗などで流れるため、こまめな塗り直しは必要です)
「SPF50+最強説」の“ワナ”。防御率の真実
「だったら、数値が高い方が、より長く防げて良いじゃないか」 そう思いますよね。しかし、ここにもう一つの重要な視点、「紫外線カット率」があります。
- SPF15 → UVBカット率:約93.3%
- SPF30 → UVBカット率:約96.7%
- SPF50 → UVBカット率:約98.0%
この数字を見て、あなたはどう感じましたか? そう、SPF30とSPF50の防御率の差は、わずか1.3%しかありません。SPF15と比べても、その差は5%未満です。
SPF値を15から50まで引き上げても、防御率はほんの少ししか上がりません。しかし、そのわずかな防御率を上げるために、製品にはより多くの紫外線防御剤を配合する必要があり、それが「ベタつき」「肌への負担感」「価格の上昇」に繋がる可能性があるのです。
つまり、日常使いにおいて、肌への負担感を我慢してまでSPF50+に固執するメリットは、実はほとんどないのです。
忘れてはいけないもう一つの指標「PA」
そして、忘れてはならないのが、もう一つの指標「PA」です。
- SPF: 肌を赤くするUVB(レジャー紫外線)を防ぐ
- PA: 肌の奥深くまで届き、シワやたるみの原因となるUVA(生活紫外線)を防ぐ
PAは「+」〜「++++」の4段階で、+の数が多いほど防御効果が高くなります。 どんなにSPF値が高くても、PA値が低ければ、肌の老化(光老化)を防ぐことはできません。SPFとPAは、必ずセットで確認する必要があります。
【シーン別】SPFとPAの“最適解”はこれだ

では、私たちは具体的にどの数値を選べばいいのでしょうか。当アカデミーが推奨する、ライフスタイル別の最適解は以下の通りです。
シーン①:日常生活(通勤、通学、室内でのデスクワークなど)
- 推奨値:
SPF20〜30
/PA++〜+++
- 理由: 日常で浴びる紫外線量は、それほど多くありません。過剰な防御力よりも、毎日ストレスなく塗り続けられる「使用感の軽さ」や「肌への優しさ」を最優先すべきです。
シーン②:屋外での軽い活動(散歩、買い物、公園デートなど)
- 推奨値:
SPF30〜40
/PA+++
- 理由: 1〜2時間程度の屋外活動であれば、このレベルで十分に対応可能です。
シーン③:炎天下でのレジャー(海、山、スポーツ、フェスなど)
- 推奨値:
SPF50+
/PA++++
- 理由: 長時間、強い紫外線を浴び続ける、まさに「戦闘モード」の時です。ここでは、肌への負担よりも防御力を最優先。利用可能な最高のスペックで、肌を徹底的に守り抜きましょう。「ウォータープルーフ」機能も必須です。
まとめ
- SPFは防御の「強さ」というより、防御できる「時間」の長さを示す指標。
- SPF30とSPF50+の紫外線カット率の差は、わずか1%程度。
- シワやたるみを防ぐ「PA」のチェックも絶対に忘れてはいけない。
- 日常生活はSPF30前後、炎天下のレジャーはSPF50+と、TPOに合わせて使い分けるのが最も賢い選択。
「大は小を兼ねる」という考えは、日焼け止め選びにおいては必ずしも正解ではありません。 あなたのライフスタイルという「戦場」に合わせて、最適な「武器」を選択する。 その戦略的な視点こそが、あなたの肌を未来永劫守り続けるための、最高の知性なのです。