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【運動は“薬”である】26の慢性疾患を治療する「処方箋」としての運動科学〜世界的権威が示した衝撃のエビデンス〜

2025年12月7日

「運動が体に良いことくらい知っている」と思われるかもしれない。しかし、ここで言う「良い」とは、「なんとなく調子が良くなる」といった曖昧なレベルの話ではない。運動は、高血圧の薬や、糖尿病のインスリン、あるいは抗うつ剤と同じように、特定の病気を治療し、症状を改善させるための、明確なエビデンス(科学的根拠)を持った「医療行為」なのである。

かつて、病気になれば「安静」が第一とされた時代があった。しかし、現代の科学は、安静こそが病状を悪化させ、死期を早めることを突き止めた。そして、「動くこと」こそが最強の治療薬であることを証明したのだ。

本日は、この分野における世界的な金字塔とも言える一本の論文を紹介する。これを読めば、あなたの「運動」に対する認識は、単なる「趣味」や「気晴らし」から、命を守るための「必須の処方箋」へと劇的に変わることだろう。

今回ご紹介する論文:運動療法のバイブル

今回、議論の土台とするのは、デンマークのB・K・ペダーセン(Pedersen)博士とB・サルティン(Saltin)博士という、運動生理学の巨星たちによって執筆され、2015年に『Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports』に発表された、あまりにも有名なレビュー論文である。

引用文献: Pedersen, B. K., & Saltin, B. (2015). Exercise as medicine – evidence for prescribing exercise as therapy in 26 different chronic diseases. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 25(S3), 1-72.

この論文の凄さは、その網羅性にある。著者らは、膨大な数の臨床研究を精査し、運動が「予防」だけでなく「治療」として有効であるという証拠が確立されている「26種類」もの慢性疾患をリストアップし、それぞれの疾患に対して「どのような運動を、どれくらい行うべきか」という具体的な処方箋を示したのである。

運動が「薬」として効く26の病気

この論文で「運動療法が有効」と断定された26の疾患リストは、圧巻である。それは単に足腰の病気だけではない。精神疾患から、内臓疾患、そしてがんに至るまで、現代人を悩ませるほぼ全ての主要な病気が網羅されている。

主なカテゴリーと疾患を抜粋して紹介しよう。

  • 精神疾患: うつ病、不安障害、ストレス、統合失調症、認知症
  • 神経疾患: パーキンソン病、多発性硬化症、脳卒中後遺症
  • 代謝疾患: 肥満、インスリン抵抗性、2型糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドローム
  • 心血管疾患: 高血圧、冠動脈疾患、心不全、間欠性跛行
  • 呼吸器疾患: 慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、嚢胞性線維症
  • 筋骨格系疾患: 変形性関節症、骨粗鬆症、腰痛、関節リウマチ
  • がん: 乳がん、大腸がん、前立腺がん(サバイバーの予後改善など)

これら全ての病気において、運動は「やったほうがいい」レベルではなく、「治療の第一選択肢、あるいは薬物療法と同等以上の効果を持つ治療法」として位置付けられているのである。

なぜ筋肉を動かすだけで病気が治るのか?

なぜ、単に筋肉を動かすだけの行為が、これほど多岐にわたる病気に効くのか。ペダーセン博士らが解明したそのメカニズムの中心にあるのが、「マイオカイン(Myokines)」という概念である。

かつて筋肉は、単に体を動かすための「エンジン」だと考えられていた。しかし、近年の研究により、筋肉は収縮することによって様々な生理活性物質(ホルモン)を分泌する、人体最大の「内分泌器官」であることが判明した。筋肉から分泌されるこれらの物質を総称して「マイオカイン」と呼ぶ。

運動によって分泌されたマイオカインは、血流に乗って全身を巡り、驚くべき働きをする。

  1. 脂肪を分解する: 脂肪細胞に働きかけ、燃焼を促す。
  2. 肝臓・膵臓を助ける: 糖代謝を改善し、インスリンの働きを助ける。
  3. 骨を強くする: 骨の形成を促進する。
  4. 脳を守る: 脳由来神経栄養因子(BDNF)などを増やし、神経細胞を新生・保護する。
  5. がんを抑制する: 一部のマイオカイン(SPARCなど)には、大腸がん細胞のアポトーシス(自死)を誘導する作用があることまで分かっている。

つまり、私たちが運動する時、筋肉は単にカロリーを消費しているだけではない。「天然の万能薬」を自ら合成し、全身の臓器に届けているのである。

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「炎症」という万病の元を断つ

さらに、この論文が強調する運動の最も重要な効果の一つが、「抗炎症作用」である。

現代の慢性疾患(糖尿病、動脈硬化、がん、うつ病、認知症など)の共通の根底には、「慢性的な微弱炎症」が存在する。内臓脂肪が蓄積すると、そこから炎症性サイトカイン(TNF-αなど)が放出され、全身が常にボヤ騒ぎのような炎症状態になる。これがインスリンの効きを悪くし、血管を傷つけ、病気を進行させる。

運動は、この悪循環を断ち切る。運動時に筋肉から分泌されるマイオカインの一種(IL-6)は、他の炎症性物質の働きを強力に抑制し、全身の炎症レベルを下げることが分かっている。つまり、運動は「強力な抗炎症薬」として機能し、病気の根本原因を叩くのである。

具体的な「処方箋」:何をどれくらいやるべきか?

では、具体的にどのような運動が「薬」になるのか。論文では各疾患ごとに詳細なガイドラインが示されているが、共通する重要な原則がある。

それは、「漫然と動くのではなく、強度を意識せよ」ということだ。

多くの疾患において、単なる散歩レベルよりも、中強度から高強度の運動が含まれている場合に、より高い治療効果が認められている。

  • 有酸素運動: ウォーキングだけでなく、早歩き、ジョギング、サイクリングなど、「息が弾む」レベルの運動が推奨される。心肺機能を高めることが、死亡リスク低下に直結するからだ。
  • レジスタンス運動(筋トレ): 多くの人が見落としがちだが、2型糖尿病や骨粗鬆症、サルコペニアにおいては、筋力トレーニングが極めて重要である。筋肉量そのものを増やすことが、マイオカインの分泌工場を拡張することになるからだ。

例えば、2型糖尿病の場合、有酸素運動と筋トレの組み合わせが、HbA1c(血糖値の指標)を下げる上で最も効果的であるとされる。うつ病においては、有酸素運動が抗うつ薬と同等の効果を示し、副作用がないため、軽度〜中等度のうつ病には第一選択となりうるとされている。

医師が「運動」を処方する時代の到来

この論文が世界に突きつけたメッセージは明確だ。「医師は、薬を処方するのと同じように、運動を処方しなければならない」ということである。

「運動してくださいね」という曖昧なアドバイスでは不十分だ。「この薬を1日3回飲んでください」と言うのと同じように、「週に3回、30分の早歩きと、週2回のスクワットを処方します」と、具体的な種類、頻度、強度、時間を指示する必要がある。

もちろん、心臓病や重度の関節疾患など、運動にリスクが伴う場合もある。そのため、専門家の指導の下で、個人の状態に合わせた「用量・用法」を守ることが重要であることは言うまでもない。しかし、それを差し引いても、「動かないリスク」の方が遥かに大きいケースがほとんどである。

結論:もし「運動の効果」を持つ錠剤があったなら

ペダーセン博士は、かつてこう述べている。

「もし、運動が持つ全ての効果を一粒に凝縮した錠剤があったなら、それは間違いなく世界で最も売れる薬になり、開発者はノーベル賞をとるだろう」

その「奇跡の薬」は、薬局には売っていない。しかし、私たちは皆、その薬を作り出す工場(筋肉)を、生まれながらにして持っている。しかも、その薬は無料であり、副作用の代わりに「爽快感」や「自信」というオマケまでついてくる。

今回紹介した論文は、私たちが持つその「工場」を稼働させることが、26もの難病に立ち向かう最強の武器になることを証明した。

今日、あなたが駅の階段を上る時、あるいは近所を早歩きする時、思い出してほしい。あなたは単に移動しているのではない。あなたは今、自分自身の体の中で、がんを防ぎ、血管を若返らせ、脳を癒やすための「薬」を合成しているのだと。

運動は、選択肢ではない。それは、私たちが健やかに生きるために、毎日服用すべき「必須の薬」なのである。

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アタマジ

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